司法解剖に参加す
2008 / 07 / 29 ( Tue ) 今日は以前からお引き回し願っていた法医学教室から連絡があり、司法解剖に参加することとなりました。 医局で待っていると警察の科学捜査班が来られて、死亡状況と、関連を調べたい事前事故について、調書やカルテと共に説明されました。 法医学解剖室に向かうとオペ着を着用。 使い捨ての上下にガウン、さらにビニルの前掛け。手はゴム手袋を二重にした上に布製手袋をはめ、アームカバーもつけ、足はゴム長靴に履き替えました。そして頭部はマスクにキャップ、メガネの無い人はゴーグルとフル装備。 司法解剖で解剖にあたるご遺体は死後一日二日程度の、固定されておらず血も抜かれていない生の死体。生体の手術と同じくらいに感染や汚染のリスクがあるわけで、運動着に白衣だけでもやれていた解剖実習とはわけが違うのは当然ということです。 ここで司法解剖について説明しておくと、その対象は大雑把にいうと病院で医師の管理下で死亡が確認される以外のケース、つまり変死体であり、死因がはっきりせず犯罪性が疑われる場合に警察の要請や遺族の承諾により執り行われます。 今回のケースでは交通事故後、入院中に施設内を移動中急死というケースで、法律上の要請から事故との因果関係の有無を明確にする狙いがあります。 司法解剖では推測される死因を視野に入れつつ、脳と臓器をとりあえずすべて取り出し検査します。 要所要所で先生が検査項目や所見を口述されると、解剖中ずっと立ち会われている警察の方がそれを所定の用紙やメモに書き取り、別の人が写真をとっていきます。 実際に解剖にあたってみて、やはり解剖実習とは外見も感触も相当に異なることを実感しました。 しかし構造が変わっているわけではないので、解剖実習で学ぶこともそれだけ生きてきます。 流れ出る血、生体とあまり変わらない感触、これらも最初こそ戸惑いを感じたもののすぐに慣れて、実習と同じ感覚で扱えるようになったし、むしろ固定されていない分刃の通りは良かったように思います。 しかし実習とは大きく違い、今回最後まで慣れることのなかったものがあります。 それは臭い。 それは言葉で形容できる範囲外の強烈さ、それこそ、思考回路がやられるほどのものがありました。 敢えて言うなら、語弊がありますが、生ゴミの臭いとドリアンの臭気がこれでもかというぐらい凝縮されたような…。これは腹部の消化器=胃や小腸、結腸部分で顕著で、小腸の腸間膜からの切り出しを行っていたときなんかリアルに意識が飛ぶ勢いで、さりげなく、しかし無理やりに、他の学生にバトンタッチしちゃいました。 さらに、身体全体で言えることとして、魚をさばいている時のような、血液の生臭さが常につきまとってきます。 この臭いの問題は今日使った部屋の設備がいかんせん旧式であることと夏の湿った暑さに大いに関係していると思われますが、もっと劣悪な環境で手術や解剖を行っていた先人の苦労がしのばれます。 話を戻し、解剖を進めていくと肺動脈にゼリー状の血栓を確認。 そして事故による損傷部位に関連のある末梢静脈にも血栓を確認。 見事に死因は解明されました。 何はともあれ今日の司法解剖を終えて、単にその医学的技術的なノウハウだけでなく、警察と法医学教室が連携して事件の究明にあたっているという生の現場に身を置けたということに充実感を感じると共に、改めて人の死について認識を新たにさせられる強烈な印象を覚えずにはいられません。 |
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