映画『Renegade』に見るシャーマンのドラッグ儀式 - The Journey : Somewhere Down the Road

映画『Renegade』に見るシャーマンのドラッグ儀式


『Renegade』2004(仏題 Blueberry)
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    この映画、最初に言っておくとたぶん日本ではみるのは難しいです。
おそらく日本未公開で、ビデオ化されてません。だから海外から取り寄せました。
    あのヴァンサン・カッセル主演でジュリエット・ルイスも出ているのになぜ?ということで気になってみてみたくなりました。

    ストーリーは基本的に西部劇で、主人公は若かりし頃、愛する女性を別の男の乱入によって目の前で失うというトラウマチックな事件から、人里から逃避して山奥のインディアンにかくまわれて生活を共にしていました。
    そして現在は町のシェリフをしていますが、あの憎き男が近くのインディアンの聖なる山に眠る宝を追っていることを知り復讐の戦いを始めます。インディアンの幼なじみとはまだ深い交流があり、彼も伴って一行は聖なる山へと向かいます。

    ガンファイトありお宝レースありと一応西部劇らしくなってるんだけど、この映画の本質は、インディアンのシャーマンによるドラッグ・メディテーションなんじゃないかと思います。

    筋を言うと、主人公は若い頃からずっとこころに傷を負ってきた。そしてそれは憎き相手の方も同じだった。
    最終的に彼は幼なじみのインディアンに施されるドラッグを用いた(おそらくアヤワスカ)シャーマン儀式によってこころを癒し、自分を発見することができます。

    その儀式が見所で、すごい凝ったCG特殊効果で、ドラッグによる幻覚世界を表現しています。これを見せるために映画がついてるような気さえします。そのせいで日本には受け入れられなかったのかな。
見たい人はYoutube でどうぞ。
http://www.youtube.com/watch?v=736NKsK86Uk&mode=related&search=





    シャーマンの幻視儀式にちょっと興味あります。
    もちろんドラッグは健康に悪いし、ドラッグに溺れたらそれこそ目の当てようもないことになっちゃうでしょう。
    ドラッグを、その毒性・危険性を鑑みず安易な快楽やスリルだけを目的に乱用することはなんとしても禁じなければなりません。脳や体、精神に損傷を与えるほか、下手をすると命まで落とします。
    しかし、麻薬も使用物質を厳選し、厳格な管理下で用法用量を守って、一定の様式、たとえば太古から行われてきたシャーマンの儀式のような形式に沿って厳かに執り行えば、人の精神を癒したり、創造的に’拡張’したりすることができる可能性もあるかもしれません。 むろんこれは暴論の一種ではありますが、何事も可能性について考えることまで禁じては進歩はありません。
    ここで肯定的な効果を認めうる麻薬とするのは、
ヘロインやコカインといった、麻薬中毒を生み出すべく商業的に生産流通され、強度の毒性・中毒性・後遺症の危険のあるものは断じて除きます。では麻薬とは他になにが残るかというと、広義に言ってみれば酒やたばこ、コーヒーも麻薬性物質の摂取がその消費の大きな動機・目的となっています。

    実際、これをドラッグの利と呼ぶかは難しいところですが、世のアーティストなどクリエイティブな仕事で知られる優秀な人たちの多くは創作活動のインスピレーションを得るためにドラッグを経験 しているし(無論麻薬のために命を落としたり著しく健康を損なうものが多いが)、今では常識のDNAの螺旋モデルを発見してノーベル賞をうけた科学者クリックは、発見時に幻覚剤LSDを服用していて、それが「見えた」のだ ということが死後公表されました。(生存中はパブでビールを飲んで酔っていたことにしていた) 
    このクリックの話を聞くと、猿が手を繋いでいたとか、蛇(ウロボロス)が自分の尻尾を噛んでぐるぐる回っていたとかいう「夢」で見て発見されたベンゼン環も、ドラッグやってたんじゃないのかと疑っちゃいます。



    LSDー25の実験で解明された、幻覚状態についてのおもしろいデータがあります。そこでは、被験者の脳波と精神状態が観察されました。
    被験者は一切の注意・集中力を失っているにもかかわらず、脳波上の停止反応(アルファー波ブロッキング)が現れました。これは目を開けて外部刺激に反応している状態や、目を閉じて暗算をするときにも現れる反応です。これは幻覚剤投与下の朦朧状態では本来起こりえないはずのものです。ところが現実にはこの不合理が発生しているのです。

    このような幻覚剤の不思議な作用に、トランス状態下でいわゆる神の国に旅立つ秘密が隠されていると、メソアメリカのシャーマニズムに詳しい精神医学博士の宮西氏は推測する。
    すなわち極度の注意・集中力は情動をせき止め、極度の情動はあらゆる注意・集中力を制止する。幻覚剤の刺激によっておこる情動とシャーマンの修行によって修得した高度の集中力の相互作用で特殊な精神変容状態が生じ、自我境界線が消失し、宇宙融合的境地にはいるというのです。そしてそこには宇宙融合という超時間的世界が確立されるのではないかといいます。
    幻覚剤の利用、瞑想やヨガおよび断食などの行為は、精神変容に至る手段と成り得る。その証拠に、いずれの方法によっても同様な脳内ホルモンの変化が生じることが最近の研究で明らかにされてきました。
※LSDは大変強力な幻覚剤なので、決して素人が用いてはならない。

    ある人は、ドラッグを用いたシャーマンの儀式によって見えるヴィジョン(=幻視)は実は脳内で異次元世界、神々の世界への扉が開かれるために見えるのだといいます。また、そこでは知的生命体と交信することもでき、未来のことや、人生の悩みやトラウマへの答え、未知の技術や知識のヒントを与えてくれるといいます。

    たとえば地上最強のドラッグといわれ、太古からアマゾンの儀式で用いられてきたアヤワスカという天然幻覚剤を、シャーマンの儀式で正しく服用すると、みんな同様に極彩色の世界に行き、絡み合う知的な蛇が出現し、他にワニやヒョウが現れるそうです。
    なぜみんなに共通してこれらの「生き物」たちに出会うのかというと、あるシャーマンは「みんな同じところに行くのだから当然だ」と言うそうです。

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Ayahuasca vision :Mariri
Fecha: Marzo 16, 2002



    またこのアヤワスカのセッションをうけると、人によっては過去の封印された記憶やトラウマがあたかも今起こっているかのように再現され、その試練に立ち向かうことでこころの傷を癒し、過去に向き合うことができたといいます。
    そうしてセッションがおわったときには、自分の人生と、すべての生命に止めどなく感謝の気持ちがあふれてくるように感じる人が大勢いるそうです。
    まあこういうのはただ単にハイになっているだけだとも説明できるかも知れませんが…それにしても興味深い体験だと思います。
他にもアルコール中毒が治ったとか、さらにはガンが治ったとか言う話まであります。
    さらに信じがたい話のついでに付け足すと、ハーバード大学医学部が実験でアヤワスカを定期的に施した結果、参加者全員にアルコール依存症が治ったり精神的にゆとりが出たりという治癒効果が認められ、IQが平均6ポイント上がったという。

    一方で、こうした幻覚剤の体験にはグッド・トリップのほかにバッド・トリップがあり、嘘や悪意にまみれて生きてきた人はバッド・トリップに陥り、地獄に堕ちるような恐怖体験をするそうです。
    それに、実際に服用する前には必ず断食などの行程を経なければならず、用量を間違えると命の危険もあるので素人が勝手にやっていいものでありません。
    なのでこうした儀式に参加するときは本当に真摯な気持ちが必要とされます。

    このアヤワスカなる麻薬植物はブラジルでは信仰の自由によりシャーマンの儀式で合法的に使用が認められており、ペルーでも体験できるそうです。
    ということで物好きな私はいつかどんなものか見てみたいです。ダッシュ(走り出す様) というのもこうした儀式のような精神的営みに敬意を抱き、精神の視覚化というものに純粋に興味があるからです。
    何度も言いますが、快楽やスリルを求めるためだけの麻薬の乱用には断固反対です。

    最後の最後に映画の話に戻って、この映画、大自然の映像も綺麗だし、幻覚体験がある以外は演技や演出もクラシック。ネイティブの存在感が自然でいて神秘的なところは、個人的にポイント高いです。音楽もいいできだと思うし、全体的にクオリティの高い作品です。
    はっきり言ってなんで日本でリリースされないのか理解できません。私は楽しめました。




参考文献
古代文化と幻覚剤―神々との饗宴

精神医学者が自らの体験によって幻覚剤文化の世界を解く。様々なドラッグの効果や歴史、その文化的価値と弊害をわかりやすくまとめてあって、興味ある人はおすすめです。




人類の発祥、神々の叡智、文明の創...

アヤワスカのとんでもネタが満載…。読み物としておもしろいです。


COMMENT

完全なことをしようなどと、どこかで思っているから、眠れなくなるのである。あとは野となれ、山となれ。絶望的な、無責任な言葉のようでもあるが、私はむしろ絢爛たる自然のなりゆきに頭をさげさせられている人間を連想する。人間は多かれ少なかれひびの入った茶碗に似ている、とそういう人々(私もその一人だが)は考える。無理をすると割れてしまう。だから穏やかにやれることだけをやり続けても救済の道には向かっているのだ。しかし、一人の人間の心の中にある苦しさなどは、他の人にはわかるものではない。

2007.05.26| URL| 通りすがり #- [編集]

コメントありがとうございます。
人間はひびの入った茶碗とはおもしろい表現ですね。
確かに何事も穏やかに着実にやっていくことは、何事も早く早くと急かして自然のリズムを損なってしまうような現代社会にとって今一度大切にしたい態度ですね。
人間の心の中にある苦しさも、ほかの人が百パーセント完全に把握することは不可能でも、ほかの人とともに癒すことは可能だと思います。人間の心には自然治癒力が備わっているし、それは誰かの理解や援助・介護によってずいぶんと促進されるものだと思います。v-238

2007.05.27| URL| ODYSSEIA #- [編集]

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